何気ない日常の食卓に、そっと彩りを添える清水さんの器。シンプルながらもパッと目を引く美しい色合いと、驚くほど手になじむ使い心地の器たちは、 どのようにして生まれているのでしょうか。
作り手である清水さんの歩んできた道のりは、決して平坦なものではありませんでした。「自分にできることは何か」を模索し続け、行き着いた器作りの裏側には、 生活者としての徹底的な優しさとこだわりが隠されていました。
葛藤の末に選び抜いた、自分らしく土と向き合う生き方
物語の始まりは、大学の入試を控えた頃。元々絵を描くことよりも、手を動かす造形に惹かれていた清水さんは、美大の工芸科へと進みます。染色、漆、陶芸という3つの基礎を1年間満遍なく学ぶ中で、一番「やっていて楽しい」と選んだのが、陶芸の道でした。
「大学時代はオブジェばかり作っていました」と、清水さんは振り返ります。しかし、卒業を機に「制作を続けていくなら、オブジェは少し作りづらい」と、器作りへと静かにシフトしていきました。
そこからの道のりは紆余曲折の連続でした。一般的な就職活動にどうしても馴染めず、京都にアトリエを借りて制作をしながら模索する日々。追い打ちをかけるように、コロナ禍で次第に作家活動もままならなくなり、一度は地元に戻り、陶芸とは関係のない仕事に就きながら、土に触れない時間を2年間過ごすことになります。
「コロナが落ち着いてきた頃、自分が本当にやりたいことは何かと考えた時、再び陶芸の道へ戻ろうと決意しました」
再び京都の地へ戻り、陶芸家のもとで技術を学びながら、アルバイトを掛け持ちして懸命に生活を立て直した清水さん。決して平坦ではない道のりの中で、「自力で歩む」ことを選んだその姿勢には、強い意志が宿っています。日々の生活を大切にする「一人の生活者」としての視点こそが、清水さんの器が持つ、優しくも確かな魅力の源泉なのかもしれません。
スーパーのお惣菜もハッピーに変える、徹底した「生活者」の視点
清水さんが作る器の根底にあるのは、「使っていて違和感がないこと」、そして「日常に溶け込むこと」です。「丁寧に取り扱わなくても大丈夫。仕事で疲れた日に、スーパーでお惣菜を買ってきて私の器に盛り付けたとき、ちょっとだけハッピーな気持ちになってもらえたら」と、清水さんは微笑みます。その言葉通り、清水さんの器は驚くほど実用的です。
電子レンジや食洗機を気兼ねなく使え、色移りもしにくい「半磁器」の土を厳選。さらに、食器棚に片付けるとき、他の器とも綺麗に重なり合う「奇抜じゃない形」を追求しています。その理想の形として、清水さんがリスペクトを込めて挙げるのが、誰もが一度は目にしたことがある「春のパンまつり」の白いお皿です。
「シンプルだけど機能的には最高。あれ、めちゃくちゃ使いやすいんですよ」
実家にあるそのお皿のサイズを実際に測り、日本の食卓に最も馴染むサイズ感を自身の浅鉢へと落とし込みました。用の美を追求する視線は、常に暮らしの真ん中に置かれています。

日常に溶け込む「機能美」
ストレスフリーな「半磁器」:
電子レンジや食洗機が気兼ねなく使え、色移りもしにくい、陶器と磁器の強みを併せ持った土選び。
暮らしに収まるスタッキング:
食器棚で他の器ときれいに重なり合う、引き算から生まれた「奇抜じゃない」安心の形。
計算し尽くされたマグカップの取っ手:
重さを感じさせない絶妙な下めの配置と、指を傷つけない丁寧なヤスリがけの痕跡。
日常の「違和感」をなくすための、見えないひと手間
清水さんの器を手に取ると、シンプルな造形の中に、ハッとするような美しい色彩が目に飛び込んできます。一つの作品に対して、2種類以上の釉薬を掛け分ける。それは、気の遠くなるような手間の積み重ねです。
「やるかやらないかで、並べた時の雰囲気や華やかさが全然違ってくる。ちょっとしたひと手間で、見栄えやお客様の手にとっていただける確率が変わるなら、労力は惜しみたくないんです」
その「ひと手間」への執念は、ブランドのアイコンでもあるマグカップに凝縮されています。たくさん入り、こけない安定感を持ち、何より持ちやすいこと。取っ手をただ接着するのではなく、わずかに「足」を設けて接着面積を広げ、外れるトラブルを防ぐ。さらに、指が触れる裏側の角は、ヤスリで滑らかに削り落とされています。
「取っ手の位置も、少し下めにつけているんです。下から包み込むように持ち上げられるので、重さを感じにくい。でも下すぎると指が入りにくくなるので、絶妙なスペースを残しています」
初期のモデルから何度もバージョンアップを重ね、すっと指が入る軽やかな厚みへと進化を遂げたマグカップ。底には、朋花(ともか)の「と」をあしらったサインが静かに刻まれています。

【munyより:この記事を読んだあなたへ】
清水さんの器が持つ、お惣菜を載せるだけで食卓がパッと明るくなるような不思議な魅力。その背景には、清水さんが一人の生活者として向き合ってきた葛藤と、日常の「違和感」を徹底的に排除する優しい職人魂がありました。気負わずに毎日使える、でも使うたびに少しだけ嬉しくなる。そんな温かい器を、ぜひあなたの暮らしにも迎えてみませんか。