INTERVIEW

作家インタビュー

【陶華スザク】西 歩希 / 心がぽっと華やぐ、手仕事のパステル陶器

高校時代に出会った「才能があるよ」という温かな一言に背中を押され、陶芸の世界へ飛び込んだ西さん。美大や職業訓練校で技術を研鑽し、彼女がたどり着いたのは、硬い陶器に宿る「布のようなやわらかさ」と、食卓をパッと明るく彩るパステルカラーでした。静かな工房で生まれる器たちの手触りと、そこに込められた優しいストーリーを訪ねます。

「センスがあるよ」——魔法の一言から始まったものづくり

工房の中で静かにろくろと向き合う彼女が、陶芸家を目指した原点は高校時代にさかのぼります。進路に迷っていた頃、ふらりと参加した美大のオープンキャンパス。そこで初めて試した陶芸体験で、講師からかけられた「センスがあるよ」という一言がすべての始まりでした。

「あのとき褒めていただいた嬉しさがずっと胸に残っていて、今でも自分の軸になっています」と彼女は穏やかに振り返ります。

奈良の芸術短期大学で立体造形やオブジェ表現を学び、京都の職業訓練校でろくろの基礎を習得。さらに先輩作家のもとでフォルムのキレや作家としての立ち振る舞いを学び、独立を果たしました。

「硬い陶器」に宿す、布のようなやわらかさ

彼女の手から生まれる作品を触ると、土のぬくもりとともに、どこかぽってりと手に馴染む心地よい重みを感じます。「陶器という硬い素材を、いかにやわらかく見せるか」——それは学生時代から絶えず探求し続けているテーマです。

デザインに行き詰まったとき、彼女が開くのは学生時代につけていたクロッキー帳だと言います。

「長くつくっていると、どうしても『使いやすさ』を優先して発想がこり固まってしまうことがあるんです。でも当時のスケッチには枠にとらわれない自由なアイデアがたくさん詰まっていて。過去の自分からヒントをもらいながら、今の暮らしに馴染む形へ落とし込んでいます」

使い勝手のよさを兼ね備えながらも、どこか愛らしい丸みや優しさを感じさせるフォルムには、そんな試行錯誤が隠されています。

食卓をパッと明るく照らす、試行錯誤のパステルカラー

器たちの魅力をより惹き立てているのが、絶妙なパステルカラーの色彩です。発色を綺麗に見せるため、あえて白く明るい発色の「半磁器」の土を選択。内側と外側で釉薬(ゆうやく)を掛け分ける作業は、温度や湿度を配慮しながら二日間をかけて慎重に行われます。

特に試行錯誤を重ねたパステルピンクは、何度も調合を変えてたどり着いたこだわりの色合いです。機械の数値に頼るのではなく、自分の手で濃度を感じ取りながら作られています。

「渋い伝統的な陶器も素敵ですが、私は『かわいい器で盛り付ける楽しさ』を届けたいんです。お昼休みのスイーツや日常の煮物を盛るだけでも、食卓にポンと置くだけでお部屋全体が明るくなるような存在になれたら嬉しいですね」

暮らしに寄り添い、10年後も愛される器へ

毎日気兼ねなく手に取れるよう、器の形状を考慮し重量バランスを考え抜いた軽さへのこだわりも欠かしません。

自身も好きなカラーやモチーフを集めるトキメキを大切にしているからこそ、使う人にも「どの色にしようかな」と選ぶ時間を楽しんでほしいと願っています。

「量産品にはない、手仕事ならではの微細なフォルムの違いや色の表情があります。10年、20年経っても『やっぱりこの器、かわいいな』と愛着を持ってもらえるような作品を、これからも楽しんでつくっていきたいです」

お気に入りのキャラクターの作業用サンダル

【munyより:この記事を読んだあなたへ】

手に取った瞬間にふっと心がやわらぐような、絶妙な軽さとぽってりとしたフォルムをもつ西さんの器。お料理を盛り付けるだけで食卓が一気に明るくなる温かみは、手仕事だからこそ生み出せる魅力です。自分へのご褒美にはもちろん、新しい暮らしを始める大切な方へのギフトにも、ぜひお気に入りのパステルカラーを選んでみてください。